有馬記念にもちろん賭けた。
賭けたが、towerはそれ以上に緊張していたレースがあった。
これは、誰も頼んでいないのに勝手に大勝負を作り出した一人の男の物語である。
【side story:覚悟の9R】
23日。
天皇誕生日にtowerはある男に一通のメールを送った。
「有馬記念の予想を教えてください」
「ゴホゴホ、風邪気味で頭が働かないんです」
「当てなければ薬が買えなくて死んでしまう」
男の名前はエドギンとしておこう。
エドギン「いや、店開いてるから飲みに来いよ」
エドギンは競馬の予想の傍ら、居酒屋を経営している。
ただ、面倒くさいのでその返事は放置した。
ただ、予想が知りたいだけだった。
ただ、お金がほしいだけなのだ。
「ゴホゴホ」
そんな決死のメールに心を打たれたのか、エドギンから返信がきた。
やはり尊敬できる男。
料理を作らせれば天下一品、文京区最高の人格者、男の中の男。
競馬の師匠とさせてもらおう。
エドギン「有馬記念の予想はこれだ」
エドギン「だけど、その前の9Rに有り金全部突っ込め」
エドギンからのメールに緊張した。
そして思い返した。
「
エドギンの予想メール一回も当たったことねーよ」と。
やはりあいつは尊敬できない。
料理も人格も競馬も中途半端なヤツだ。
反面教師とさせてもらおう。
しかし、このメールは看過できない。
よほど自信がなければ、メインレース以外の予想をするはずがない。
いや、予想はしてもメールしてくるはずがない。
悩んだ末、
どうでもいい9Rの単勝に10,000円突っ込むことにした。
倍率1.5倍。
リスクばかりデカい賭けになっている。
単勝に万単位で賭けるのは初めてなので、かなり震えた。
鍋を食べつつ焼酎を飲んでいると、やがてその時を迎えた。
運命の9R。
つーか有馬記念よりもお金突っ込んでるメインレース。
クリスマスの昼間というのに、俺は部屋で叫んだ。
そして、勝った。
親友であるエドギンにメールしようと思ったが。
肝心の有馬記念で「勝ってマイナスになる」ということをやらかしたエドギンに。
甘やかしちゃいけないと思い、全然メールしていない。
エドギン、お前との友情はフォーエバーだぜ・・・!?