<連続小説>
自分の名前の由来について父に聞いてみると、祖父が名づけたことを知った。
「父さんは、その理由を知っているの?」
そう尋ねると、父は半分知っていると答えてくれた。
田舎で教師をしながら農業も営んでいた祖父。厳格な人柄という印象が強い祖父だが、私という初孫の誕生に、それはたいそう喜んでいたそうだ。どんな子に育ってほしいのか。地面にしっかりと根を下ろし、しっかりと両の足で人生を歩んでほしい。因んだ漢字が私の名前になった。但し、と父は付け加えた。他の漢字でもよかったはずだけど、頑なに今の名前にこだわっていた。どうしてもこの漢字がよかったみたいだけど、その理由は、そういえば聞けていないと。
しばらくして祖父のいる実家に帰ることになった。入院している祖母の見舞いのためだった。ちょうどその頃に仕事の繁忙期を迎えていたため、頭の中から名前の由来なんてものは消し飛んでいた。一泊二日のスケジュールだったため、着いて早々に両親と一緒に病院へ行き、親戚のところへ挨拶に行きと、とても慌しかったことを覚えている。
夜になって家に戻ると、祖父が起きて待っていてくれた。両親が別の部屋で荷物の整理をしている時。祖父と2人きりになった時に、名前の由来について尋ねてみた。しかし、なかなか答えてくれない。そんなに不思議な由来なのか、私の名前は。ただ、言いたくない理由があるはずなので、質問はそれきりにしておいた。
布団を敷いて横になっていると、祖父が障子越しに話しかけてきた。まだ起きているか。うん、起きているよ。さっきの質問なんだけどな。
「・・・左右対称の漢字が良かった」
唐突な内容に、思わず噴き出してしまった。障子越しなので顔は見えないが、きっと照れくさそうにしていることだろう。ありがとう、おやすみと伝えると、祖父の影は遠ざかっていった。普段マジメなことばかり話す人だったので、そのギャップとあいまって、何だか嬉しかった。名前の由来、大切にするよ。
レクサス、それは贅沢が由来。
最高の車で最高のドライブを楽しもう。