俺の駅は北口と南口に分割されていて、俺は南口側に住んでいる。
原哲夫風に言うと、
ノースエリアとサウスエリアと言ったところか。
EXAMなら分かると思うが、この2つのエリアは駅を挟んで完璧に二分されている。
うすうす気づいていたことだが、今日ハッキリした。
民度が違いすぎる。
牛丼を買うために久しぶりにノースエリアに踏み込もうとした瞬間、目を疑った。
改札を出て北口に向かう通路の窓に、女子高生が4人座っている。
窓が高い位置にあるのでスカートの中が丸見え状態だが、一向に気にしていない。
髪の毛の色も、欧米に見られる系統が主流のようだ。
俺は、高い窓に横になって座っている女子高生を、鳥のように感じた。
それはさながらゴミを漁るカラスのような、夕焼けを見てカァーカァー鳴いているカラスのような。
あまり美しい鳥ではないが、社会の景色であろう。
さっそくノースエリアの洗礼を受けたようだ。
エスカレーターで下ると、売れ残ったパンを抱えたパン屋の店員が叫んでいた。
「
1個50円! 1個50円」
エスカレーターの降り口は大盛況。
昇降の邪魔になるような場所で商売をするとは。
そしてそれに群がる客とは。
彼らに必要なのはパンではなく、常識だろう。
牛丼を買って帰ろうとすると、ある安売りスーパーが見えた。
この時間に店の外まで行列を作るとは、何があったのだろうか。
店員が何か叫んでいる。
「
揚げ物全品50円! パック寿司が300円!」
その声は、踏切の警告音と、電車の通り過ぎる音で聞こえなくなった。
電車が通り過ぎた後、家に着くまで何も聴こえなかった。